ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「……リーゼロッテ様はぁ、昨日、王城からいらしてた騎士様とは親しい間柄(あいだがら)なんですかぁ?」
「カイ様の事……? ええ、そうね、親しいというか、以前からとてもよくしていただいているわ」
「うぅむ、そうなのですねぇ。あの方は悪い噂が絶えない方なのでぇ、正直おすすめできないのですがぁ。……そうですねぇ、リーゼロッテ様がそこまでお望みでしたら、このベッティ、よろこんでおふたりの愛のお手伝いをさせていただきますぅ」
「え? 愛のお手伝い?」
「はいぃ、わたし、密会のセッティングなんか、けっこう上手くやれる方でしてぇ。ご用命があれば、このベッティ、いつでもリーゼロッテ様のお役にたってみせますよぅ」

「み、密会!?」
「はいぃ、密会、男女の秘めたる逢瀬(おうせ)ですぅ」
「誰と?」
「リーゼロッテ様とぉ」
「誰が?」
「カイ・デルプフェルト様がぁ」
「ちょっと待ってちょうだい。ベッティ、あなた、話が飛躍(ひやく)しすぎよ!?」

 リーゼロッテが慌てたように(さえぎ)ると、ベッティはわかっていますとばかりにうんうんと(うなず)いた。

「お隠しにならなくてもよろしいのですよぉ。仕える方の思いを忖度(そんたく)するのは侍女として当然のスキルですぅ。エラ様直伝(じきでん)の気遣いをいかんなく発揮(はっき)しますのでぇ、リーゼロッテ様は大船(おおぶね)に乗ったおつもりでいてくださいぃ」

(大船どころか泥船(どろぶね)なんじゃ……!?)

 リーゼロッテはあわてて頭をふるふると振った。

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