僕を、弟にしないで。僕はお義父さんの義息子になりたい
部屋のドアがノックされた。
「あ、大地さんだ」
大地さん? 親戚の人のことだろうか?
「紫月さん、俺、ドア開けますよ」
そう言うと、俺はベッドから降りて、ドアを開けに行った。
ドアを開けると、廊下には灰色の髪の男の人がいた。ウルフカットの髪型が特徴的で、紫月さんより年上のハズなのに、髭が全然生えていない。黒い無地のハットをかぶって、ブランド物っぽくて、痛みが全然ない革ジャンを羽織っている。すごくおしゃれだ。モデルや俳優とかをやっていそうな雰囲気が醸し出されている。
「こんにちは。初めまして、山吹蓮夜です」
「ああ、君が蓮夜くんか。初めまして、紫月大地だ。義勇の父親の兄だよ。ところで、義勇は?」
君が? もしかして大地さんは、紫月さんから俺の話をある程度聞いているのだろうか。
「そこにいます」
後ろに一歩下がって、ソファを指差す。
「義勇‼︎」
大地さんが部屋に入って、紫月さんに後ろから声をかける。
「ヒイッ!」
悲鳴のような声を上げて紫月さんは振り向いた。多分大地さんの声が大きいのに驚いたのだと思う。
「全くお前は、俺にどれだけ心配をかければ気が済むんだ!」
大地さんが紫月さんの髪の毛を掴んで、髪をぐしゃぐしゃにする。
「だ、大地さん髪、崩れる。俺今日、まだワックスつけてない」
「そんなこと知るか!」
思わず口をあんぐりとあけて、二人を見る。
紫月さんと大地さんはただの親戚同士なのに、まるで、本当の親子のように見えた。
「どうした蓮夜」
俺の顔を見て、紫月さんは笑う。
「紫月さんが、大地さんの子供みたいに見えて」
「まあ俺は子供みたいに思っているからね。義勇がどう思っているかは知らないけど」
「大地さんが本当に父親だったら嫌ですけど」
「そんなことよく言えるな。僕がいなかったら、今頃とっくに死んでいたくせに!」
大地さんが紫月さんを睨む。
「嘘です嘘。ああ、怖い」
そう言って、紫月さんは肩をすくめた。
「あはは。めちゃくちゃ仲良いですね」
いいな、羨ましい。俺も大地さんみたいに、紫月さんと親子みたいなやりとりがしたい。