意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「ねえ、朔哉。お義父さんも月子さんも、女の子がいいって言ってるけど、朔哉はどっちがいい?」

「そうだな。どっちでもいいが……偲月に似た娘がほしい。偲月は?」

「わたしは、男の子がいい。朔哉の小さい頃が見られるから」

「似てるとは限らないだろ」

「でも、きっと面影はあるよ。なんか、不安もいっぱいあるけど……楽しみ。早く会いたいね?」


Tシャツの胸元あたりを掴んで、はにかんだ笑みを見せる偲月は、普段のちょっとツンツンした様子とギャップがあって、たまらなくカワイイ。


「ああ」

「でね、さっき月子さんと話してて……なんか、無性に豆大福食べたくなって」

「……は?」

「マカロンだと、口当たりが軽いからつい何個でも食べられちゃうでしょ? でも、豆大福だと一個で結構満足感あるし。一回食べたら、しばらくもちそうだし。忙しい朔哉にわざわざ買って来てもらわなくても、コンビニで売ってるし。それに、和菓子って身体にも良さそうじゃない? だから、マカロンは週一回の一ダースで我慢して、あとは豆大福にしようかな、と思うんだけど」

(何の解決にもなっていない。それどころか……)


和菓子は、意外とカロリーが高いし、予約が必要な『SAKURA』のマカロンとちがい、ストックがなくなってもコンビニですぐに買えるとなれば、余計歯止めがかからないだろう。

結果として、マカロン三ダースを二日で平らげるのとあまり変わらないのでは……。

と思ったが、せっかく機嫌が直ったのに下手なことを言って泣きだされたくない。

いまになって、ようやく鞄の中に入れっぱなしの百万円のことも思い出したが、彼女の話をして再び妊娠、出産への不安がぶり返しても困る。


(……話すのは、明日でいい)

「ねえ、朔哉ってば!」

「……わかった。カロリーが低い豆大福を探してみる」

「やった! ありがとー!」


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