意地悪な副社長との素直な恋の始め方
ただ、この先しばらく不便な生活を強いられる朔哉を思えば、今夜一晩だけ、こうして過ごせば十分だとは思えなかった。


「迷惑……じゃなければ、朔哉の怪我が治るまで、ここにいる。わたしにできることがあるなら、何でもする」


右利きの人間が右手を怪我すれば、あらゆることが不便になるのは明白だ。
日常生活はもちろん、仕事の上でも、わたしがカバーできることがあるのなら、何でもしようと思った。

入社式、会計監査、株主総会を控え、副社長である朔哉の忙しさはこれからどんどん加速する。

ただでさえ休む暇もないというのに、自分にはまったく関係のないことに巻き込まれて怪我をするなんて、迷惑以外の何物でもない。

しかし、朔哉が呟いたのは意外な要求だった。


「べつに、何もしなくていい」

「え? いや、そういうわけには……」



「俺の目の届くところにいれば、それでいい」


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