恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
<ブランシュール城・9時>

「君さえよければ、この城を案内してくれないか?」
その言葉に
ダイアナは、にっこりほほ笑んだ。

「いいわよ。でも、明日からは
あなたが専属の使用人だから、
一人でやるのよ」

「へ?・・・」
アルが間の抜けた返事を返した。
そんな事は聞いていない・・・

「テレーサ様は贅沢(ぜいたく)を好まないから・・
手はかからないわ。
ひとりでも大丈夫って」

よく事情が呑み込めないが、
この館には
ひとりも使用人がいない事を
理解した。

ブランシュール城は広いが、
昔の栄華は、埃にまみれている
ようだった。

どの部屋も
使われていないようで、薄暗くさびれ、空気がよどんでいる。
台所も火が落ちていて、荒れていた。

「テレーサ様ってどんな方なんだ?」

ダイアナはちょっと考えるように
「ずっと修道院で生活してきた人だから、清貧?
というか最低限というか・・・
まぁ、
手がかかる人ではないわ・・・
身の回りも自分でやるし」

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