恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
ダイアナは、手際よく書類を
タイプで打ち始めた。

「あなたは人質で王族って、
書類が回ってきたけど・・」
アルは苦笑して
「昨晩、勝手に人質を解除されてしまった・・」

ダイアナはタイプの手を止め
アルをしげしげと見た。

「じゃあ、なぜ・・国に戻れるでしょう?」
「そうだな・・もう国を離れて
10年経つ。
今更帰っても、俺の立ち位置も微妙なんだ」
アルは説明を濁した。

王位は弟が継いでいる。
婚約者も弟の妻、王妃となっていた。
「ふーん、いろいろ訳ありなのね」

ダイアナはそれ以上の詮索(せんさく)はしなかった。

「それで、ここで俺は何をすればいい?」
「そうねぇ、テレーサ様は何もおっしゃらないから・・
自分で仕事を探すのね」

<自分で仕事を探せだと??
嘘だろ?>
驚いているアルを見て、ダイアナは笑った。

「ここでは勤務時間もあるけど、
別に何も言われないし・・
ああ、給料はきちんと払われるから安心して!」

ダイアナは、タイプから紙を引き出した。

「慣れると、よそでは働けなくなるわ。私も産休に入るのでね
さぁ、ここに署名して・・
取りあえず形式は必要だから」

アルは署名しながら考えていた。
まずはこの館を・・

自分の主人について調べなくてはならない。
何か、意図があるはずだ。
俺の首輪をはずした理由を。



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