恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)

現地調査・数日後 22-23ページ

<現地調査・ブランシュール城・数日後・16時>

アルは地図をたよりに、
車でブランシュール家の領地を
見て回った。

辺境にふさわしく、道には人影がない。
男は都会に出稼ぎに行き、
女と年寄りが、小さな畑をたがやしているという話だ。

自給自足とは聞こえがいいが、
現金収入の道がないということだ。

名目上はブランシュール家の小作人になっているが、
借地として金銭が動いているわけではない。

そもそも貧しい過疎の村なのだ。

鶏や豚、牛もいたりするが、
規模が小さい。

子どもの学校をつくりたいと
テレーサが言っていた。
村には学校がない。
医者もいない。

幼い子どもは
鶏のエサの準備をしたり、
子守や洗濯を手伝ったりしている。

人柄は純朴に見えるが、
目端のきく人間はここをすぐに出て行くだろう。

どこの家も日が当たるところに、
オレンジの木を植えている。

緑の中に
オレンジが輝いているのが、
小さなお日様のようで、
寂しさをいくぶんやわらげてはいた。

アルの車は山中に入った。

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