恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
その昔、
ブランシュール家は栄えていた跡が確認できた。

多くの岩塩抗の跡。

昔から塩は生命線のひとつだから、高値で取引もされたのだろう。
「白い金」と言われたほどだ。

大きな採掘抗の跡がたくさん残っている。

13世紀ごろから採掘がはじまり、その後も莫大な富と利権を
もたらしたようだ。

岩塩抗は武器庫としても使える
湿度や温度が一定している。

アルの頭はすぐに計算を始めた。
近くには地底湖もあるようだ。
水の補給も問題がない。

もしかすると、
辺境だが、ここは国境の軍備の拠点になりうるかもしれない。

何らかの利用価値はある。
取引のカードにはなる。

岩塩抗の使用料、賃料で大きな利益がでるが、相手の出方にもよる・・

という、壮大な話よりも・・・
まず・・・
すぐに現金収入に結びつき、
女やこども、年寄りにでも
できるものは何かないか・・・

産業とまではいかなくても、
とりあえずは
城の維持費用くらいは稼ぎたい。

館の絵画や宝石を売っても、
限界はすぐにくるだろう。

あのいかがわしい宝石商人のように、つけこむ奴はこの先多くなるはずだ。

アルが辺境ツアーを終えて車から
降りたのはもう、夕方だった。
「夕食・・何がいいかな」

考えながらガレージに車を入れて、納屋の裏手をなんとなく見た。

ブランシュール館の裏手は、
昔は果樹園だったのだろう。
今も繁っていて、オレンジの実が
多くなっている。

誰も取らない・・・・

アルは何となく
オレンジの実をひとつもぎ取り、
皮をむこうとした。

皮からよい香りが噴水のように・・・
広がり流れた。

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