恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
「アルバート、何を見てるのよ」
アルの背後から、声がかかった。

「リエット・・久しぶりだな」
リエットと呼ばれた女は、
美人で大輪の薔薇の花のように見えた。

彼女はなじみの高級娼婦だ。
「あなたが店に来てくれなくて、
上客も少なくなるし・・・」

「俺も飛ばされたからな。
仕方がない」
アルはたばこを上着から取り出した。

「あの娘は、あなたの使用人?」
リエットはアルの見ていた方向を見た。
テレーサは猫と遊んでいる。
「いや・・違う」
「可愛い娘ね。でも地味で使用人みたい。
あなたの趣味とは違うと思うけど」
リエットは腕組みをして、アルを見た。

リエットが大輪の薔薇なら、
テレーサは野に咲くスズランのようだ
アルは思った。

いきなり
リエットはアルの指から煙草を奪い取った。

「まるでいとおしむような・・
大切なものを扱うように見るのね」
「あなたがそんな顔するなんて
初めて見るわ」
リエットは煙草を口にくわえた。

「もしかして、あなたの新しい女・・なの?」
そんな顔って・・
女は鋭いな・・
アルはリエットの目の付け所に、舌を巻いた。
やはりプロは違う。

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