恋愛計算は間違える(アルバートとテレーサ)
「俺の新しい主人だ。
ブランシュールの姫君」
「はぁ、使用人じゃないの?
新しい飼い主ってことね?」
リエットは、あきれたように声をあげた。

「そうなの。じゃぁ・・・・」
リエットは突然、テレーサの方に歩いて行った。

「こんにちは。ブランシュールさん」
リエットの声掛けに、テレーサが顔をあげた。
「初めまして、私、リエットと言います。
隣町で商売をしているのだけれども
あなたに、大切な忠告をして差し上げようと思って」

アルは止めようとしたが
遅かった。
「このアルバート・ロランドという男はとんでもない奴で
女をさんざん泣かせてきたの。
あなたも気を付けてね」

テレーサは無言で、あっけに取られている。
リエットはそれだけ言い放つと
「じゃぁ、またね」
にこやかに立ち去った。

アルは額に手をやり、この問題をどうするか
考える前に混乱していた。
テレーサは、アルの顔をじっと見ていた。

「はは・・昔の知り合いなのですが・・
冗談がきつくて・・・」
アルはひきつりながら、乾いた笑いをした。

「そうですか・」
テレーサはいつもの無表情になり、
子猫をそっと膝から降ろすと立ち上がった。

帰りの車では
姫君は疲れたようで、ずっと目を閉じていた。
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