婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
「メイナード様、急ぎの用と聞きましたけど」

部屋の外まで転移で来たのか、予想より断然早くルーサーが到着した。

「ルーサー、旦那様の腕を見てほしいの」

アレクシアが彼を迎えながら、用件を伝える。

「腕、ですか?」

訝しげなルーサーに、椅子に座ったままのメイナードが答える。

「腕の柄が変化していると、アレクシアが言っているんだ」

「え?」

ルーサーはさっと顔色を変えて、メイナードの下に駆け寄った。

そして遠慮なく腕を掴み、顔を近づけじっと見つめる。

「これは……」

先ほどのアレクシアのように、ルーサーはごくりと息を呑んだ。

「変わったんじゃありません」

「え、そんな……」

やはりアレクシアの思い違いなのだろうか。騒ぎ立ててしまった罪悪感がこみ上げる。

けれどルーサーが続けた言葉で、そんな気持ちは拭きとんだ。

「一部分、狭い範囲ではありますが……文様が消えているんです」

驚きすぎると声が出ないのか、誰も言葉を発しない。

どれくらい過ぎたのか、メイナードが動揺も露わに口を開いた。

「そんなことが、あるはずがないだろう?」

二の腕の側面が問題の箇所のため、自分ではよく見えないようだ。

アレクシアは薬箱の中に入れておいた鏡を取り、メイナードに見えるように腕を映した。
ルーサーが補足するように言う。


「メイナード様、見えますか? ここの部分。やけに空白が大きいと思いませんか?」
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