婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
メイナードは真剣な眼差しで言う。

「はい、もちろんです」

「アレクシアはブラックウェル公爵夫人だ。たとえ王太子でも勝手な振舞いは許されない」

メイナードはかなり警戒している様子だった。

(今の話以外にも、気になる報告を受けたのかしら)

アレクシアをあまり安にさせないように、伏せている情報もありそうだ。

なにかよくないことが起きているのかもしれない。考え込むアレクシアに気づいたのか、メイナードが表情を和らげた。

「すまない怖がらせてしまったな」

「いいえ、大丈夫です」

「食事にしよう」

メイナードの言葉で、少し冷めてしまった食事を取りはじめる。

ふたり共幼い頃から厳しいマナー教育を受けてきているので、どんなときでも所作は優雅で美しい。

しばらく静かに食事を続け、食後のコーヒーの時間になるとアレクシアは先ほどから気になっていることを聞いてみた。

「王都にいる部下は、ブラックウェル公爵家の間者なのですか?」

王家には情報収集能力に特化した部下がいると聞いたことがある。このブラックウェル公爵にもそのような役割の家臣がいるのだろうか。

「ああ。少数だが要所に潜り込ませている。なにかあった時に情報が無くて対応が遅れては命取りになるからな」

「そうなのですか。あ、だから私が嫁いできたときも、最新のドレスや家具が揃えられていたのですね」
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