婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
突然決まった結婚なのに、よくこれだけのものを用意できたものだと当時不思議に感じたのを覚えている。

王都の店で買ったにしても、ブラックウェル公爵領まで運ぶのには何日もかかるものだからだ。だとすると王命が下る前に、情報を得て動いていたと考えるのが自然だろう。

しかしメイナードは苦笑いを浮かべながら否定した。

「残念ながらアレクシアの件について、情報を掴めていなかった。イライアスの身辺を探るようになったのは、俺たちの結婚が決まった後なんだ」

「では、あの準備は?」

「王命を受けた後に、ルーサーを王都にやって少し調査をしたんだ。そのときに花嫁を迎えるのに必要なものは揃えて持って帰った。ルーサーの空間魔法を使ってな」

アレクシアは目を丸くした。

「そんなことができるものなのですか?」

「大した負担にはならないと言っていたが」

荷馬車何台分もの荷物を軽々と収納できる空間魔法を軽々と……本当に普通の人間にそんなことが可能なのだろうか。

以前、メイナードとアレクシアを同時に転移させたことと言い、ルーサーの力は一般の人の力を遥かに超えているように感じる。

メイナードの呪いのように、外部からの影響を受けている様子もないのにどうして……。

「ルーサーは不思議な人ですね」

アレクシアの言葉に、メイナードはわずかに首を傾げた。
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