婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
それなのにメイナードは、「俺はソファーで眠る」と言い出した。

「え、そんな」

思わず寂しさを口にしてしまうと、メイナードはあからさまに動揺した。

「だが、一緒に眠るのはまずいだろう?」

「そんなことありません。私たちは夫婦なのですから」

「それはそうだが……」

「それに、メイナード様が椅子で私がベッドを使うなんてできません」

しばらくの攻防の末、メイナードが折れて、同じベッドで眠ることになった。

といっても広いベッドなので、ふたりの距離はかなり空いている。

「メイナード様」

呼びかけると、天井を向いていたメイナードが体を横にした。

「どうした?」

「なんでもないです。ただ名前を呼びたくなったんです」

本当は寂しさを感じたからだ。人とは欲張りなもので、一度甘い経験をすると我慢ができなくなる。

メイナードの腕の心地よさを知ってしまったアレクシアは、どうしても夫の温もりを求めてしまう。

その気持ちが通じたのか、または彼も同じ想いなのか、メイナードは逞しい腕を伸ばし、アレクシアを腕の中に閉じ込めた。

ドクドクと高鳴る鼓動が伝わってくる。

「メイナード様」

愛しさがこみ上げて呼びかけると、そっと唇を塞がれた。

ついばむような口づけを繰り返すうちに熱が入ったメイナードが、アレクシアを組み敷くように覆いかぶさってきた。

じっと見降ろして来る黄金の目は鋭い光を湛えている。
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