婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました

ブラックウェル公爵夫人としての生活が始まった。

婚礼の儀式では大きな不安に苛まれたが、それ以降は主人であるメイナードはいないけれど、至って平和な日々が続いている。

あまりにも何も起きず、暇を持て余すほどだ。

普通の貴族夫人は、社交に力を入れる一方で、屋敷内を人事も含めて切り盛りする。

しかしブラックウェル公爵家では社交を行わないし、使用人の管理も必要ない。

ルーサーは自由に過ごして下さいと言っていたけれど、なにをすればいいのか困ってしまう。

「アレクシア様、本日はなにをお召しになりますか?」

「ディナが選んでくれる? 動きやすいものならなんでもいいから」

「ではこちらにしましょうか。美しい金髪が映えて素敵だと思います」

ディナが用意したのは青のデイドレスだった。上質な生地ではあるが装飾が少なく、スカートの膨らみも抑えられているので、希望通り動きやすい。

ドレスに合わせて、髪を綺麗なまとめ髪にしてもらった。

鏡に映る姿は活動的だが上品で、顔色もよく見える。

アレクシアの部屋には多くのドレスが用意されていた。しかも不思議なことにどれもがオーダーしたようにアレクシアにぴったりと似合うものだった。

突然の輿入れだったのに、どうやって用意してくれたのか疑問だった。

しかしこの衣装のおかげで、アレクシアは王都にいた頃よりもセンスのいい衣装持ちになっている。

充実した食生活に、女性らしく整えられた部屋。ディナに用意された部屋も、公爵家の侍女としての衣装もかなりよいもので、ふたりとも衣食住にはなに不自由していなかった。

正直言って邪魔者扱いされていた生家での暮らしより余程恵まれている。
< 38 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop