政略結婚ですが、身ごもったら極上御曹司に蕩けるほど愛されました
 大きくて温かい翔吾の手に触れられて、柚子の身体は熱くなる。耳を塞ぎたくなるほどに恥ずかしい声が漏れ始める。
「柚子、怖くない? 大丈夫?」
 柚子の胸がずきんと痛む。
 すぐに夢中になってしまう柚子とは違い、彼はいつも冷静だった。
 怖くないか、痛くないか、無理をしていないか。
 ひとつひとつ、確認をする。
 そしていつもその彼のまま、最後まで冷静さを失うことはない。
 その姿に、柚子の胸は締め付けられる。
 愛されていないことは知っていた。
 彼にとって、自分は姉の代わりだということも。
 でも結婚さえしてしまえば、もしかしたら少しは変わるかもしれないと、どこかで密かに期待していた。
 その期待は、とうの昔に打ち砕かれた。
「翔君」
 大好き。
「翔君……!」
 愛してる。
 言えない想いを飲み込んで、柚子は彼に縋りつく。
 週に一度金曜日の夫婦の夜がふけてゆく。
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