下弦の月
屯所に着いたのは、なるべく時間を明けてからという事で、昼過ぎになった。










屯所の門を潜ると、中から顔を出したのは、土方さんだった。









今朝の瞳とは真逆の優しい瞳で、ホッと胸を撫で下ろした。






「八重に月香!どうしたんだ?」







「皆さんが心配で…何か役に立てないかと…」







「そうか、助かる。入ってくれ。」







笑みを含んで言った土方さんに促されて中に入ると、






後処理なのか、屯所内はバタバタしていた。






連れて来られた部屋には、負傷した隊士が寝転んでいた。







そこに、一人の隊士がいて。






その隊士を土方さんは、山崎と呼んだ。








監察方の山崎烝。








八重に指示を出して怪我人の世話を。





そう、山崎に指示を出して。






「月香は、俺と来てくれ。」






腕を取り、向かった先は。





裏庭にある井戸だった。






そこには、土方さんが原田と呼んだ男がいた。






大量の手拭いを前に、四苦八苦していた。






十番組隊長の原田佐之助。






「月香にも、手伝ってもらえ。」






「あいよ。」






原田さんの返事を聞いて、





頼んだぞ。と背中を向けた土方さんの大きな背中に、






「土方さんは?」






と、聞くと。






「俺は…今から出掛けなきゃいけねぇんだ。」






振り返って答えると、私の髪を撫でて。





屋敷内に戻って行った。
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