下弦の月
それから、数日後ーーー。





斎藤さんは、紀州藩の三浦休太郎という人物の警護に当たるため、




屯所を出て行った。







天満屋という旅籠にいる、斎藤さんに、




ほとんど毎日のように……差し入れを持って行く八重は甲斐甲斐しくて、




可愛い乙女の顔をしていた。






原田さんは、完敗だな。と嘆いていたけれど。







その一方で、沖田さんの病は悪化の意図を辿るだけだった。





さすがに気付いた土方さんは、




屯所を離れるように説得するが、彼は頑なに断り続けていた。






そんな時、斎藤さんが詰めていた天満屋で事件は起こった。





三浦休太郎の襲撃を企んでいた海援隊士と陸援隊士が、



ついに襲撃をしてきたのだ。






斎藤さんは特に、目立った外傷もなく、




無事に帰って来た。








その日から、二週間程後ーーー。





近藤さんが御陵衛士の残党に襲撃されて、



重症を負ってしまい……近藤さんは大阪に護送され、



療養生活を送ることになる。




それに便乗して、沖田さんも近藤さんと一緒なら。と…大阪に向かった。








それから、年の瀬も迫っていたが……




十月にあった大政奉還で元々、油小路事件以前から忙しかった土方さんだが……




さらに忙しく働いていて、この年の除夜の鐘は、




一緒に聞けるはずもなかったが、せめて年越し蕎麦でも食べて欲しくて。





屯所で、皆に年越し蕎麦を振る舞った。





年が明ければ、戊辰戦争が勃発して……





もう最後になるだろうから。
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