下弦の月
「それなら早速、朝御飯を作ってあげようよ。美味しい朝御飯を斎藤さんに、ねっ?」





「うん、先に行ってるね。ちゃんと着て来て。」










そういえば、長襦袢のままだった。




昨日、布団に入る前に着物だけ脱いでいたから。





土方さんも寝間着のままだし。







八重が出て行った後の部屋で、土方さんの手を取って。





その掌にキスをしていた。






「…どうしたんだ?」






「何でもないです…」






言えるわけがない。




いつも私の頭を撫でてくれる掌で、八重の頭を撫でたから嫉妬した…なんて。








「どうせなら、ここにしてくれよ?」






土方さんは、私の手をそのまま唇に寄せて。





そんな事を言うから、




背伸びをして土方さんの唇にキスをすると。






満足そうに笑ってくれた。








着物を着て、勝手場に向かうと準備を始めていた八重と、





食事当番だった沖田さんと一番組の人達と、




朝御飯を作った。





適当に味付けをしようとする、沖田さんを止めながら。
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