来世にご期待下さい!〜前世の許嫁が今世では私に冷たい…と思っていたのに、実は溺愛されていました!?〜
 彼女が言い終わるより先に、その体を裕一郎が腕の中に閉じ込めてしまう。

 突然の抱擁(ほうよう)に驚いて硬直する恋幸をよそに、裕一郎は片手で彼女の頭を撫でながら耳元に口を寄せて「だから?」と低く囁いた。


「だっ、だか、ら、」
「はい」
「……謝らないでください。私、倉本さんは何も悪くないのにって時に謝られたら、胸が苦しくなります」
「ああ……それは困りますから、必要以上に謝らないよう気を付けますね。では代わりに、」


 そこで言葉を切った裕一郎は、いったん体を離すと両手で恋幸の頬を包み込むようにして持ち上げる。


「……ありがとう、小日向さん」


 ひどく穏やかに微笑む彼の姿が視界を独占して、満開の桜にも似たその美しい光景に、恋幸は一瞬息継ぎの仕方を忘れてしまった。


「あっ、こ、こちらこそ! いつも、ありがとうございます」
「いえ、私は何も。……ああ、そうだ。小日向さんに聞きたいことがあります」
「聞きたいこと?」
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