偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
10.「お前以上に大切に想う人はいない」
やはり櫂人さんときちんと話さなくては。

勝手な憶測で傷ついて、悲劇のヒロインではないけれど、足踏みしていたくない。

必死に奮い立たせた決心が鈍る前にと、昼休みにメッセージを送った。


【大切なお話があります。今日の帰宅時間を教えてください】


意外にもすぐに既読になり、返事が届いた。


【悪いが、忙しくて時間が読めない。夕食は先に食べて、休んでほしい】


やんわりとした拒絶のメッセージに心が冷え込む。

それでもここであきらめてはいけないと自分を鼓舞してもう一度メッセージを送る。


【どうしても話したいんです。少しの時間でかまいません】


【週末なら可能だと思う】


【ありがとうございます。お願いします】


敬語も丁寧語もしばらく使っていなかったのに、なぜかメッセージには使ってしまった。

彼への緊張感の表れだろうか。

話し合いはほぼ一週間近く先延ばしになったが、拒否されたわけじゃない。

渚にその旨を伝えると応援された。

貴臣くんにはメッセージを送った。


【つらい思いをしたらきちんと慰めてやるよ】


貴臣くんらしい温かな返信に気持ちが和んだ。

櫂人さんは私が話したい内容に気づいているだろうか。

彼の予定確認もせずに勢いのまま電話をして、自分の気持ちをぶつけるのが正解だったかと今になって思う。

けれど、どうしても彼の都合や忙しさが気にかかる。

これが貴臣くんならある程度図々しく踏み込めるのに。

その違いはなんだろうと考えたが答えは出なかった。
< 161 / 208 >

この作品をシェア

pagetop