偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
『他人に興味がないイケメンに見初められるなんてすごいな、藍』


「だから、それは口実だって今説明したでしょ? ……ちょっと待って、貴臣くん、栗本副社長を知ってるの?」


『実家同士の付き合いが一応あるからな。古い年下の友人ってところだ。それよりやっぱり藍は世話好きというか、お人好しだな』


「だって目の前で具合の悪い人がいたら気になるし、助けようと思うでしょ」


私の返答に貴臣くんが小さく息を吐く。


『まあ、感情に裏表がなくて真っすぐなのが藍のいいところだからな』


「それって褒めてるの?」


『もちろん。話を戻すがそのご令嬢、藍に似てるんだろ? お前って栗本の好みのタイプなのか?』


「違うわよ。そもそも白坂さんとはお互いの利益のために示し合わせていただけらしいから。あんな強引で傲慢な人は絶対にお断り」


知らず知らずのうちに語調がきつくなる。


『藍にはそれくらい強引な男のほうがいいと思うけどな』


「なんで?」


同調するどころか、真逆の意見を言われて驚く。


『藍は色恋に縁がなさすぎだからなあ。兄代わりとしては心配なんだよ。栗本なら身元は確かだし、いいんじゃないか?』


「なにもよくないわよ」


『そうか? 初対面の相手には大抵興味を示さない藍が感情をむき出しにするなんて、イケメン副社長になにかされたのか?』


驚くほど勘の鋭い兄代わりのひと言に、頬にカッと熱が帯びる。
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