偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
「まあ、あんなハイスペックな兄代わりがいたらそりゃ厳しいだろうけど」


「ハイスペックって……」


「だって初恋の相手でしょ」


「初恋っていうより、高校時代の私の憧れね。そもそも相手にされてなかったし」


「……恋愛と結婚って、タイミングと縁が大事なんだって藍を見てると痛感するわ」


親友が胡乱な眼差しを向けてくる。


「どういう意味?」


「現実に目に見えるものだけがすべてじゃないって話よ」


「よくわからないけど……渚は結婚に反対なの?」


「いいえ。栗本副社長は藍を大切にしてくれると思うわ」


きっぱり言い切る渚に少し疑問が湧く。


「なんで?」


「引く手あまたな王子様に選ばれたんだし、答えは自分で探しなさいよ」


「選ばれたわけじゃないから」


「ハイハイ、変なところで鈍感すぎる婚約者をもつと苦労するわね。とにかくこの話は口外しないし、なにかあったらすぐに話してよ」


親友はなぜか楽しそうに言って、サンドイッチを頬張った。

対する私は彼女の台詞を反芻するが答えは見つからなかった。
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