偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
翌日の土曜日は澄み切った青空が広がっていた。


昨夜は遅くまで大変だった。

なにを着ればいいか迷いに迷ってクローゼットをひっくり返す勢いで服を探していた。

デートなんていつぶりだろう。

脳裏に親友の呆れ顔が浮かんで思わず肩を竦める。

買い物のようだから、カジュアルすぎず歩きやすい服装がいいだろう。

でもスカートとパンツどちらがいいのか。

装いにこれほど悩んだ経験はなく、今さらながら自身の恋愛スキルの低さにため息が漏れる。

結局、淡い桜色をしたロングシフォンプリーツスカートに白地に花の刺繍が入ったカーディガンを選択した。

やっとの思いでベッドに入ると今度は、緊張してまったく寝つけなかった。

いい年をして本当になにをやっているのかと情けなくなった。


仕事を終え、職場から急いで帰宅する。

約束の時間ぴったりに彼から到着の電話があり、戸締りをして階下へと向かう。


彼の姿はすぐにわかった。

マンションのエントランスから少し離れた場所で、紺色の車体に凭れるように長い足を交差して立っている。

カーキのカットソーに白いパンツ姿がとても似合う。

スマートフォンを操作しているだけなのに、目が惹きつけられる。

マンションを出入りする住人の視線を一身に集めているが本人はまったく意に介していないようだ。

きっと注目を浴びるのに慣れているのだろう。
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