偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
小さく吐いた息が重い。
あんなに魅力的な男性が夫になるなんてやはり信じられない。
平常心で隣に立ち続ける自信はすでにない。
この期に及んで弱音を吐くべきではないとわかっているのに尻込みして逃げ出したくなる。
副社長に向かって踏み出した足が無意識に止まる。
とっくに決めたはずの覚悟が揺らぐ。
「藍」
呼ばれた名前と、私を見つめてふわりと相好を崩す姿に心が落ち着かない。
長い足が躊躇う私との距離を一瞬でゼロにする。
「――体調が悪いのか?」
「え?」
綺麗な目が少し揺れる。
そこに浮かぶのは、心配?
「目の下のクマが酷いし、なんだか泣きそうな顔をしてる」
どうして。
そんなに簡単に私の心の中を暴くの?
私に興味なんてないくせに、なんで気がつくの?
「……大丈夫です。昨日なかなか寝つけなかったので」
「なんで寝れなかったんだ?」
「緊張、して」
「緊張?」
子どもじみた理由を丁寧に聞き直さないでほしい。
頬に一気に熱が込み上げる。
きっと彼は呆れているだろう。
「それはよかった」
「え?」
「少しは俺を意識したってことだろ?」
綺麗な二重の目が嬉しそうに細められる。
なぜそんな言い方をするの?
この外出だって、義務的なものでしょう?
心の中に浮かび上がる幾つもの疑問を臆病な私はなにひとつぶつけられない。
あんなに魅力的な男性が夫になるなんてやはり信じられない。
平常心で隣に立ち続ける自信はすでにない。
この期に及んで弱音を吐くべきではないとわかっているのに尻込みして逃げ出したくなる。
副社長に向かって踏み出した足が無意識に止まる。
とっくに決めたはずの覚悟が揺らぐ。
「藍」
呼ばれた名前と、私を見つめてふわりと相好を崩す姿に心が落ち着かない。
長い足が躊躇う私との距離を一瞬でゼロにする。
「――体調が悪いのか?」
「え?」
綺麗な目が少し揺れる。
そこに浮かぶのは、心配?
「目の下のクマが酷いし、なんだか泣きそうな顔をしてる」
どうして。
そんなに簡単に私の心の中を暴くの?
私に興味なんてないくせに、なんで気がつくの?
「……大丈夫です。昨日なかなか寝つけなかったので」
「なんで寝れなかったんだ?」
「緊張、して」
「緊張?」
子どもじみた理由を丁寧に聞き直さないでほしい。
頬に一気に熱が込み上げる。
きっと彼は呆れているだろう。
「それはよかった」
「え?」
「少しは俺を意識したってことだろ?」
綺麗な二重の目が嬉しそうに細められる。
なぜそんな言い方をするの?
この外出だって、義務的なものでしょう?
心の中に浮かび上がる幾つもの疑問を臆病な私はなにひとつぶつけられない。