偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
なにを贈れば喜ぶ?


どうすれば笑う?


藍が絡むと、途端に俺は余裕のない狭量な男に成り下がる。

自分以外の誰かをこんなにも大切に想った経験はない。

ビジネスならいくらでも冷静に戦略をたてられる。

なにを最優先すべきか瞬時に判断できる。



それなのに今の俺は初めて出会う感情に振り回されてばかりだ。

どう立ち回ればいいか迷ったのは一度や二度ではない。



……自分でもカッコ悪すぎて嫌になる。

それでも、何事にも真っすぐな彼女がこの先傷つかないよう、俺のすべてで守りたい。
 


――藍をずっと捜していた。

見合いの席で告げた告白を彼女はどう受けとめただろう。

その場を乗り切るための適当な嘘だと思っただろうか?

でも、俺にとってあの言葉は嘘偽りのない真実だ。

今はまだ話せない現実が歯痒い。


どれだけの時間を過ごし、なにを伝えれば彼女の信頼を得られるだろう?


地位や財産に興味のない藍に俺はなにができる?


お前の気持ちが俺に傾く日はいつか来るだろうか?
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