偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
7.「絶対に誰にも譲らない」
お風呂に逃げた日から、一週間が経った。



私たちの生活スタイルは相変わらずだが、彼は私の干渉を少しずつ受け入れてくれていた。

あくまでも『家族』『便宜上のパートナー』としての歩み寄りだとわかっているのに、名前を呼ばれるたびに焦って、ふとした折に彼の姿を思い出す自分がいる。

これじゃまるで櫂人さんに恋をしているみたいだ。

そんなのはおかしいし、ありえない。

彼にとって、私は恋愛対象外の存在で恋焦がれたところで叶うはずがないのだから。

そもそも不毛な、結末の見える恋愛なんてお断りだ。

わざわざ悲恋なんてしたくない。



そんなモヤモヤした想いを抱えていたある日、町内会の植栽活動のチラシが郵便ポストに入っていた。

そこには歩道の植栽桝植え替えボランティア募集の記載があった。

この辺りの歩道は土がむき出しと言った殺風景なものではなく、樹木の根元をぐるりと可愛らしい花々が覆っていたり、手入れがきちんとされている。

仕事で疲れた帰り道や、眠くてつらい朝など、そういった小さな花々に幾度も癒されていた。

作業予定日は今週の日曜日だ。

幸い週末にはなにも予定がない。

興味が湧き、後で申し込み手続きをしようと、チラシをキッチンカウンターの隅に置く。

 
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