ふたりぼっちの孤城
椿の好きな人
安心する匂いがする。

お日様の匂いだとかそんなのじゃないけれど、ずっとここにいたいと思える匂い。

その正体は・・・────。


「・・・ん、山吹?」
「はい。貴方の山吹ですよ。おはようございます、椿」


やっぱり山吹だ。

薄らと目を開けると、腕を枕にして寝そべっている山吹がいた。

それだけでも驚きなのに、山吹は幸せそうな顔でわたしのおでこに唇を落とした。

それから満足そうにわたしの頬を撫でてくる。

ワンテンポ遅れて状況を把握した途端、ぶわわと体が火照り、そのまま思いっきり後ずさった。


「い、今!今!!」
「? どうされました?」


わたしが動揺している理由を分かっているくせに、山吹はまた距離を縮めてくる。

そのまますっぽりと腕の中におさめられた。


「ちょっと!近づきすぎよ!」


ぐいぐいと胸板を押してもビクともしない。

こっちは必死だってのに、山吹は楽しそうにわたしの様子を観察してくる。

せめてもの抵抗でそっぽを向くと頬をツンツンとつついてきた。
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