俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜



それから、そこでしばらく赤ワインと自転車の出前で注文したおつまみを口にしながら世間話と近況報告、情報交換を行う。

天才魔術師先生の乗ったタクシーを見送った時には、既に東雲の時間を迎えていた。

東の空が薄紫色に染まって、辺りが少しずつ明るくなっている……夜明け。



人気もまばらなメイプル通りを、一人歩く。

タバコの空き箱を捨てて通り過ぎた者もいれば、酔い潰れて路肩に座り込んで寝ている者もいる。

地下鉄の始発までは全然時間があるが、一人で飲み直すほどの気力は無い。

帰路に着くために、そこらでタクシーを捕まえようとした……その時だった。





「おやおや?朝まで飲み明かしてましたか?音宮の代表さん?」





その声だけで、殺意が体から滲み、溢れる。

他の誰でも無い、ヤツだ。




「ーーーおまえぇぇっ!」



冷静沈着を保っている性分なのだが、まさか渦中の人物が突然背後から現れるという不意を突かれて、逆上したともいえる。

しかもパーソナルスペースを破り、耳元で囁いてきた。

咄嗟に霊力を込めた右腕を振り回すが、ひらりと回避されて距離を取られる。
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