俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜

だが、懸念はそれだけではない。



……先の『事変』で。

美奈人の母であり、御館様の孫娘であり。私達の大先輩陰陽師である雨宮ゆずらさんが、マントラのボス的存在であるアユール・ヴェーダと死闘の末、【相殺】で契約した魔力を奪い、生け捕りにした。

アユール・ヴェーダが契約で魔族に捧げた体の部分とは、片耳、内蔵と脳の一部だけ。

それ故に【相殺】で魔力分解が行われた際、契約で捧げた片耳は失くなり、脳の一部は機能不全となる。

結果、アユール・ヴェーダは身体の部分欠損がありながら何とか生き永らえているも、高度脳機能障害のため、顔貌が崩れ、疎通不良。何を喋ってるのか、全くわからない。時々粗暴行動にも出たり、突拍子もなく急に大声をあげたり……ようするに、簡単に言えば廃人になってしまったのだ。

こんな思考レベルじゃ、裁判になんかならない。

結局、罪に問う事は出来なかった。シャバで生活することも出来ず、精神科病院で長期療養となり、家族のいないアユール・ヴェーダは恐らく……退院は無理だ。

死ぬまで病院で生きるのだろう。



なんとも痛ましい結果か。
< 288 / 515 >

この作品をシェア

pagetop