マリオネット★クライシス


「……はぁ? なんですって!?」

相手の要件を聞き終わるなり、思わず普段の彼女からは考えられない、はしたない声をあげていた。

「取り引きって……何をやりたいかはわかったけど、今一体何時だと思ってるのよ! しかも土曜日よっ? 今から、なんてそんな、相手が捕まらなかったら……」

返ってきた簡潔な答えに、潤子はさらに目を吊り上げる。


「私を脅そうっていうの!? よくもっ――」


運転手が振り返るほどの音量で叫んだ潤子は、悔しそうに拳をつくり、眉間に皺を刻んだまま視線を宙に彷徨わせた。
起死回生の打開策がそこらへんに浮かんでいないか、とでもいうように。

しかし……


たっぷりと悩んだ後、その唇からかすかに、忌々し気な吐息が漏れた。

はなから選択権はない。
こちらは、人質を取られているようなものなのだ。

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