マリオネット★クライシス

「――それで、追いかけてきたオジサンたちが、あの2人組の仲間なのかなって、思ったん……だけど」


遠慮がちに、語尾が小さくなった。
話を進める間に、彼の表情がどんどん険しくなっていくことに気づいたから。

特に2人組の一人が、日本語の上手い欧米人で美形っぽく見えた、って伝えた時。

「ジェイ……?」

もしかして、よく知ってる人なのかな。
ジェイが言う“敵”とは関係あるの?

わけがわからないまま見つめていると、彼はしばらく考え込むように目を伏せ、それから再び仰向けにひっくり返ってしまった。


「Why……why,SD……don’t know……」


柔らかな黒髪を乱暴な調子でかき混ぜながら、ぼそぼそ早口でつぶやかれたのは英語だ。
SD? って、何かの略称かな?

やがて黙り込んだジェイは、クロスさせた腕で目元を隠すように覆ってしまう。

なんとなく察するに……“追われることは想定内”だったっぽい。
ただ、あの2人組に“お尋ね者”として追われる覚えはない、と。

詳しいことは全然わからないけど、きっとこれだけは確か――彼にはわたしが知らない秘密があるらしい。

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