マリオネット★クライシス
「事故でお父さんたち死んじゃってからずっと、いつだって自分のことは後回しで、あたしのこと考えてくれて……」
声のトーンは抑えめ、ペースは遅め。
伏せた瞼を、結んだ唇を、ほんの少しだけ、震わせて。
「あたし学校辞めてバイトするよって言ったのに、子どもはそんなこと考えなくていいのって高校行かせてくれて……自分は、昼も夜も働きづめで」
時折拳を唇に押し当て声を詰まらせれば、ハッと息を飲む気配が伝わって来た。
「クタクタなはずなのに、いっつも笑って。あたしには、自分の幸せだけ考えなさい、って」
潤んだ瞳をそっと上げる。
涙がこぼれない、ギリギリの角度まで。
「まぁ……」
その目も声も、同情が滲み始めてる。
うん、もう一押し。
「あたし、お姉ちゃんにまだ何も恩返しできてないんです! 今お姉ちゃんを一人にして帰ったら、亡くなった両親に怒られます! あたし一生後悔しますっ! お願いです、せめてお義兄さんが来るまで、付き添わせてくださいっっ」
ぽろぽろ涙をこぼしながら訴えると、相手はずずっと派手に鼻をすすりあげた。
「大変だったのね……わかったわ! あなたがしっかり、お姉さんについててあげて!」
「はいっ!」
手を取り合って咽び泣くわたしたちを、病院のスタッフさんがギョッとしたように遠巻きに過ぎて行った。