マリオネット★クライシス
「空耳かな? 行かない、って聞こえたんだけど」
わずかにトーンが変わり不快な雰囲気が伝わってきたけど、怯んじゃダメだ。
ここまで来たら、言いたいことを言うだけ。
「馬淵さんには今回のドラマでもお世話になってますし、目をかけていただいてとてもありがたいと思ってます。でもわたしは、正当に実力で選ばれたいし、こういうやり方には従えません」
一言ごとに、明らかに相手のまとう空気が変わり、その眼差しが陰気な光を帯びていくことに気づいた。
「ほう、従えない、ねぇ……?」
愛想のいい顔は、表向きってわけね。
負けるもんか、ときつく唇を引き結んだ。
「……ぼくはね、二度目のチャンスをあげるほど、寛大な方ではないよ? つまり、君はたった一度しかないチャンスを、棒に振るわけだ。君にはもう、女優としての未来はないよ? うちの局だけのことだと、甘く見ない方がいい。ぼくには友人が大勢いるからね」
予想通りのテンプレワードと、聴かせる気があるのか疑うようなトーンに段々うんざり……まぁ聞きますけど。
「君だけじゃない。君の事務所はどうなるだろうね? まぁ2代目のせいで昔の勢いもないし、モノになりそうなのは中条瑠衣くらいだが。後輩たちのチャンスも、君が潰すことになるんだよ。わかっているかい?」
「そうやって、何人と寝てきたんですか? わたしだけじゃありませんよね?」