マリオネット★クライシス

ユウ――結城栞は、自分の人生に舞い降りた女神だった。

本人はまだ知らない。
初めて会ったあの日からずっと、自分が彼女に焦がれてきたことを。

触れることも言葉を交わすことも望まない、ファンの一人、それでもよかった。
遠くからその笑顔を見守ることができれば、それで十分だった、今までは。


――今回を最後に、これが自分の運命なんだって全部受け入れるつもりだった。


そう、最後だと思っていた。
だからつい、欲が出た。

せめて一目会えないかと、来日を決めるなり、使える限りの伝手(つて)を総動員した。

意外にもタイミングよく協力者が見つかり、直接会う段取りが整う。

握手はしてくれるだろうか。
あわよくば写真も一緒に一枚、いや二枚か三枚……

自分でもおかしいくらい舞い上がっていた。
そのせいだろう。
カモフラージュが甘くなり、()に居場所を気づかれてしまった。

なぜSD(・・)が関わっていたかはわからないが……どうせ、足を引っ張ってやろうという連中がろくでもないことを注進したに決まってる。

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