マリオネット★クライシス

そうだ、わたし……テレビ局で馬淵さんに枕営業を断って、それで会議室を出ようとして、そしたらこいつが……


気絶させられた所まで思い出して、もう一度、今度はゆっくり上半身を起こしてみる。
縛られたりはしてない。大丈夫。

ここは……テレビ局の中、じゃないよね。

どうやって連れてこられたのか知らないけど、どうみてもここはホテルの一室……家具の感じからして、割とハイグレードなツインルームだ。


「シェルリーズホテルだよ、ここ」

わたしの疑問が伝わったのか、男が言う。

「栞ちゃん運がいいよ。こんなすごいホテルで初体験させてもらえるなんて。馬淵さんて、空いてる楽屋とかでヤっちゃう時もあるからさ」

ニヤニヤ笑いながら、隣のベッドに腰を下ろした。

ベッドが大きくて、彼との間に十分距離があってよかった。
じゃなかったら、叫び出してそう。

「種明かしすると、たまたまなんだけどねー。ほら、うちの音楽祭今夜、っていうか今、ここのサザンクロスホールでやってるじゃん? だから局側が、出演者用に多めに部屋押さえてて。馬淵さんはそれに乗っかったってわけ。まぁほんとは部署だって違うしNGなんだけど、あの人そういうとこちゃっかりしてんだよなぁ」

なるほどね。よく使ってるとか常連みたいなこと言ってたけど、大ウソってことじゃない。最低。

< 271 / 386 >

この作品をシェア

pagetop