マリオネット★クライシス

男は今やパニック状態だ。


「いや、救急車はヤバいよな。じゃどうしよ……どうしよ、ダメだ……馬淵さんっ、馬淵さんだ!」


わたしの上から飛びのいた男は、窓際へ走っていく。
ソファにあった自分のリュックを探って……携帯を出したみたい。


「でも馬淵さんにどうにかできるかな……でもしょうがないよな、とにかく連絡しないと……」


焦りのあまり何度も操作を間違えてるんだろう。
背中を向けた男から、ブツブツつぶやく声と舌打ちが聞こえてくる。



よし、今のうちだ。


そっとベッドから降りたわたしは、靴を探す間も惜しんで、裸足のままドアへ走った。


内カギをそっと開錠し、ドアを開ける。



高そうな絨毯がしきつめられた廊下が見え、ホッと緩みそうになる全身を叱咤する。


早く逃げないと!
足に力を込め、全力で駆けだした。

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