マリオネット★クライシス
【日本の皆さん、こんばんは】
大画面いっぱいに、彼が映っていた。
チャコールグレイの瞳、セクシーな唇……高画質でクリアに映し出されたその美貌は、今日一日一緒に過ごした人のもので、間違いない。
【ファントムです……って言おうと思ったんですけど、止めます。今日からは、本名を名乗りたいと思います。もう一回、いいですか?】
カメラに向かってニコッと微笑むジェイに、会場内のゲストたちからため息が漏れた。
【ジェシー・リーです。初めまして。今日この場で歌えることを、とても光栄に思います】
ほんとに、本物のジェイだ。
どういうこと?
ジェイが、ファントム?
つまり彼は……歌手、ってこと?
【これから新曲を歌わせていただくんですが、できたてほやほやのMVも一緒にご披露したいと思います。オレの背中を押してくれた女神が出演してくれていますので、注目していただけたら嬉しいです。では、聴いてください――「Mrionette Crisis」】
ケガ、大丈夫なんだ……
見覚えのない真っ白なブラウスを眺めてぼんやりと考えた時、彼の指先がギターを滑り……メロウな和音が響き渡った。
包み込むように、重厚なビートを刻むバックバンドが加わり、鮮やかな音が広がっていく。
低く艶のある声が、共鳴するようにメロディに乗って……
でも残念ながら、伸びやかに響く歌声も、歌詞も、まるで耳に入ってこなかった。
ズームアウトした画面、ジェイの向こう、明るい照明が浮かび上がらせた白い壁。
そこに――……わたしがいた。