マリオネット★クライシス

一瞬――何が起こったのか、わからなかった。

結論から言うと……
ものすごい大きな音がして。

気づいたら、目の前にあったはずの車が消えていた。


「うわああああっ! 車があああっ!!」


数秒後、猪熊さんが頭を抱えて絶叫。

一拍遅れてその視線を辿ってみたら……2台の車がお団子みたいにくっついて、数メートル先の電柱に衝突してる。

どうやら後ろから来た車に、追突された……らしい。


瞬く間に、どこから湧いた? ってくらい人が次々集まってきて、
「救急車救急車!」「警察呼べよ!」
口々に叫んで車を取り囲む。


「おいおいおいおい、どうしてくれるんだよ! 俺の車ぁあ!」


野次馬をかき分けかき分け声を張り上げる彼を小走りで追いながら、いやいや違うでしょってその背中にツッコんでしまう。
まず第一に、あれは社用車。あなたのじゃない。
そして第二に、今大事なのは車じゃない。

幸い、歩いてた人にぶつかってはいないみたいだけど、
心配なのは運転してた人だよね……と、ハラハラしながら覗き込む。

幸い、すぐにガコン、と不格好な音を立てて、後方の白いミニバンのドアが開き、スーツ姿の細身の男性が這うようにして出てきた。

よかった……派手にクラッシュしたのは前の方だけだったみたい。
彼自身は、エアバックのおかげかケガもなさそう。

周りの人と一緒に、あぁよかったと息を吐きだした。

< 44 / 386 >

この作品をシェア

pagetop