マリオネット★クライシス

「おっと、ごめんごめん、おしゃべりしてる時間はなかった。この後ヘアメイクもするからね。今度はこっちを着てみてくれる?」
「は、はいっ」

受け取りながら、そっと視線を落とす。
世の中には、いろんなお母さんがいるんだなぁ……。




それから数十分後。

「さぁ出来上がり! 見てごらん」

満足そうな声に促されたわたしは、大きな姿見の前に進んだ。

「わ……」
自然と感嘆の言葉が漏れちゃうくらい、なんていうか……別人だった。

黒のカットソーにグレンチェックのスキニーパンツ。
一見クールな印象なんだけど、トップスは背中部分が大きく開き、リボンで結ぶようになってて女の子らしさも備えてて。
差し色の真っ赤なショルダーバックの効果もあり、まるでパリジェンヌみたいにおしゃれだ。

メイクは、ファッションに合わせてアイラインを黒で強調。
ビターな赤リップが……自分で言うのもなんだけど、色っぽくて。
ルーズに崩したお団子ヘアと合わせて、カッコ可愛いスタイルに仕上がってる。

「悪くないでしょ?」
鏡の中、ドヤ顔の静さんと目が合った。

「すごいです……こういう大人っぽい雰囲気、自分に合うとは思いませんでした」

もうこっちは夢見心地でコクコクするばかり。

これまでは、ハーフっぽいイメージのせいか、ベージュとかカーキとか、薄めのアースカラーを選ぶスタイリストさんが多くて。
いつのまにかプライベートでもそういう色が普通になっちゃったけど……

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