子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 着物を着ると、自然と背筋が伸びる。こんなに素敵な柄のものを、それも新品を着たのはいつ以来だろう。

 そうして保名さんに連れられ会場に着くと、彼は足を踏み入れる前にそっと私へ告げた。

「くれぐれも問題を起こすなよ」

 今日までに何度も言い含められたのは、それだけ私に信用がないからだ。

 両親の話を聞かせてくれたから、少しは許されたのかと思ったのに、勘違いだったらしい。

 そう、あの話はなんだったのだろう。

 突然、聞かされた義両親の真実は衝撃的な内容だった。

 道理で彼が私にああも嫌悪の感情を向けているわけである。

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