子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 いくつもの試作品の中に、揚げた蕎麦であんこを包んだお菓子があった。カリッと香ばしい食感と塩気の強いこしあんが、食べる手を止めさせてくれない恐ろしい和菓子だ。

 普通のお団子ならば三つもあれば充分なところを、例の蕎麦団子は十あっても満足できない。そのぐらいおいしすぎるのである。

「私、あれも好きだったな。蕎麦粉を使った落雁」

 ほろっと口の中で溶ける落雁から上質な蕎麦が香る逸品だった。

「あれは向こうの甘味として出すことになった。食いたいなら、あっちの店に行かないとな」

「この間も行ったのに、どれだけお蕎麦が好きなんだって笑われそうだね」

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