私だけを愛してくれますか?
*◇*◇*
木屋町にあるビストロ「ガルボ」は、俺たちが学生の頃から集う店だ。
観光客の目に留まるような派手さはないが、レトロで落ち着いた雰囲気がいい。
しばらく会ってないなと思うタイミングで、誰かが招集をかけるのだが、今回は珍しく、岩倉仁の声かけで集まることになった。
集まる面子は入れ替わり立ち代わりだが、だいたい十人前後はやって来る。
『また集まるんか』とぼやきながらも、参加する人が多い。なんやかんや言いながらも、みんなこのメンバーが好きなのだ。
扉を開けると、マスターが出迎えてくれた。
「いらっしゃい、もうみんな着てるで」
手をあげて応えると、奥へと進む。半個室になっている席が、俺たちの指定席だ。
「おー。ダイ。久しぶりやな」「遅いぞ、倉木副社長!」
酒が入り、既にみんなテンションが高い。途中から参加するときには、ガンガン飲んで早く追いつかなければならないので大変だ。
「大!」
仁が手をあげて俺を呼ぶので、横に座った。ここのところ忙しかったので会うのは久しぶりだ。
「あの後どうなった?」
面白そうに開口一番聞いてくる。
最後に会ったのは、例の『お茶とお花の会』だ。当然聞かれると思っていたので、
「なんとかうまくいった。騒がせて悪かったな」と素直に礼を言った。
実際、仁には世話になった。あの時、美織が見合いをすることを教えてくれたのは仁なのだ。