私だけを愛してくれますか?
次の日、部長に報告すると、『それはまずいな』とやっと取り合ってもらえたのだが、その日のうちに、若旦那の奥様が怒鳴り込んできたのだ。
若旦那は女性関係に問題が多く、不貞の調査をしていたところ、複数いる女性の中の一人が、私だとわかったというのだ。証拠の写真と見せられたのは、昨日の駅の改札で撮られたものだった。
「待ち合わせしてたわよね?」と詰め寄られたが、必死で否定する。
この時ばかりは、部長もかばってくれた。
幸い、若旦那から贈られていたものを開封せずに置いておいたのが功を奏した。
全て奥様にお返しして、何の関係もないことを信じてもらえたのだ。
最後には「主人がご迷惑をおかけしました」と言って、奥様は帰ってくれた。
ただ事でない雰囲気に、先輩たちも『新人のくせに何事?』という眼で見てくるし、心身ともにヘトヘトになった。紳士服売り場で働き出して、わずか五ヵ月のことだった。