君の胃袋を掴む
ぱっと雅宗の方を見れば、上半身には服を身に着けていない。
その腕から、血が滴っている。
「な、ちが、怪我……!」
「あ、大丈夫、かすり傷」
「いやもう立派な傷害事件でしょ」
雑にタオルで止血をする雅宗は極めて冷静に、扉の鍵を閉めた。
呆然としながらその姿を見る。
後ろから刺される日も遠くない、たぶん。
というか既に刺されていた。
「カッターとかで、やられたの?」
ダイニングキッチンの冷蔵庫前で立ち止まって尋ねる。エコバッグの中身をさっさと入れていった。
「あ、包丁」
「え?」
引き出しの包丁入れを確認する。ペティナイフが一本ない。