月下の少女

「XP…。それはどういう病気?」


「簡単に言えば、日光に当たると死ぬ病気です。紫外線を浴びて傷ついた細胞を治す機能が備わって産まれてくるのが普通なんですけど、私にはそれがなかった。
生まれた時から欠陥品だったんです。紫外線を浴びれば浴びるだけ私の細胞は壊れていく。だから、夜しか生きれないって訳です。」


細胞とか、紫外線がどうとか、難しい話は混乱した頭で理解はできない。


太陽の元で生きれない。


だから、あの日春陽は日の出前に帰らなきゃいけなかったのか。


「それで、夜は私の時間ってわけか。」


謎が繋がったスッキリ感と共に、初めて知る謎の病気にモヤモヤは消えない。


春陽は頑なに太陽から逃げてきた。


ということは…


「でも春陽は紫外線に当たっていない。だから、このまま生きていけるんだろ?」


要は紫外線を浴びなきゃ普通ってことだろ?


なら春陽は大丈夫ってことか?


「XPは、紫外線を浴びなくても神経症状が出てくる病気でもあります。
手足が思うように動かなくなって、歩けなくなって、表情も上手く作れなくなって、話せなくなって、一人じゃ何も出来なくなる。
最終的には、呼吸も機械の力を頼らなきゃ出来なくなって死んでいく。そういう病気。
万が一、紫外線を浴びたら、火傷みたいになってそこがシミになって、酷い時には皮膚がんになる可能性もある。」


「…ッ!」


神経症状?


呼吸ができない?


ガン?


なんだよそれ。死ぬってことか…?
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