手錠、そしてキスの雨を
「とりあえず、今日からお前はこの家で暮らすから。大丈夫、ちゃんと養ってあげるからさ」

伏黒さんに頭を撫でられ、彼が私を会社に行かせるつもりがないことに気付く。慌てて口を開いた。

「ふざけないで!私から仕事を奪うなんて許さないから。あと、あんたと一緒に暮らすとか天地がひっくり返っても嫌よ!」

「俺に誘拐されたのに、ずいぶん生意気だな。まあ、そこも可愛いけど」

可愛い、と言われたことに固まっているとまた唇が重なる。しばらく唇が優しく触れ合った後、伏黒さんの舌が無理やり私の口腔内に侵入してきた。突然のことに驚くけど、残念ながら両手は後ろで拘束されているため、伏黒さんの胸板を叩くことができない。

苦しくて涙が出てくる。対抗する術を奪われた私は、ただ伏黒さんに好きにされるしかない。

苦しくて、どこかほろ苦いキスの雨が私に降り注いでいた。







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