聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
ノア様がニヤニヤしているとドアのノック音が聞こえたので俺が出ると、そこには可愛らしい女の子と侍女がいた。
「こんにちわ、あのギルバード様いらっしゃいますか?」
「あっ、はい! えっと、どなた様ですか?」
誰かの妹か、誰かの婚約者か……誰だろう。
「メルです。ギルバード様に会いにきて……」
「――あっ、メル嬢。こんにちわ、ギルならいるよー」
「ノア様、ご機嫌よう。……お忙しかったですよね、あのこれ渡してください。こっちは、皆さんで食べてください」
メル嬢、と呼ばれていると言うことはどこかの貴族令嬢か……その女性は、バスケットを二つ渡すと帰って行ってしまった。
副団長を呼ばなくて良かったのかな……と思って団長に問うが。
「まだ内緒、ね? ギル〜愛しのメル嬢が渡して欲しいって、俺らの分もくれたよ」
「……メル? なんで案内しなかったんだ、帰ったのか!?」
「メルちゃんがギルバードを見て忙しそうだったから、って」
「ノア、俺今から出るから休憩入る」
副団長は淡々と言って部屋から急いだ様子で出て行った。