聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
舞台裏1
「――まだ、部屋に篭っておられるのか?」
「はい、あれから一度も……食事もいらないと言われてしまいました」
――ここは王宮。玉座の間。
そこにいるのは男性が二人。
公爵家当主であるオスマン・セダールントと国王陛下であるレクサス・エリザベス・エミベザだ。
「本当にジークは……聖女様を追い出すなど」
「私は、私欲でメル様に頼ってしまいました。申し訳ありません」
「だが、怪我を負ったものは元気なのだろう?」
「はい、傷などなかったかのように……それに、一年前に倅が怪我によって受けた症状も完治いたしました」
オスマンの息子・ギルバートは、昨年の討伐で大きな怪我を負い後遺症が残った。半年間のリハビリを経て三ヶ月前に復帰したばかりだった。
「ほぉぅ……」
こればかりはオスマンも驚いた。
医者ですら、もう治らないだろうと言われていて前よりは劣るが討伐にいけるようになった時は奇跡だと言っていたほどだった。