聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったので、異世界でふわふわパンを焼こうと思います。
「ごめんね、アルベルトさん……私わけがわからなくなって、怖くて」
「うん」
「お父さんに会いたい、元の世界に戻りたい……」
アルベルトさんは、私が異世界にいたことを知っている。だから私のは願いが叶うことはないと言うことも。
「困らせてごめんなさい……今のは忘れてっ」
言葉にするともっとつらくて、これからもこの世界で生きていかなきゃいけないんだと実感する。
「俺はメルちゃんのお父さんに会わせることも、メルちゃんの世界に返してあげることも出来ない」
「……っ……」
「でも、メルちゃんはメルちゃんだよ。違う世界からきたとか関係ない。俺にとっては、美味しいものを教えてくれる大切な師匠だから」
アルベルトさんは照れるようにそう言った。